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2.水色のパジャマ

 

 

 今日は、ちょっと困ったことがあったの。

 

 

 車椅子の車輪にまきこんじゃって……パジャマの裾がちょっと破けちゃった。

 それだけじゃなくって、代わりのパジャマはちょうどお洗濯してもらってたところで……。

 だから、夜までのあいだはふつうの服を着ることになったの。

 ピンク色のワンピース……スカートはひさしぶりで、少しきんちょうしちゃった。

 

 

 それで、そんな格好でいたんだけど……看護婦さんや先生たちはみんな、こう言ったの。

「いずみちゃんがピンク色の服を着ているのって、珍しいね」

 それもね、ちょっとびっくりしたお顔で。

 

 

 えっとね、ホントはね、わたしがいちばん好きな色はピンクで、次がうすいレモン色。

 パジャマの方がね、とくべつなの。

 一回折っても袖があまって、他のところもぶかぶかな水色のパジャマはにぃくんのおさがり。

 もう片方の青と白のチェック柄のパジャマも、もちろんそう。

 

 

 にぃくんのだぶだぶのパジャマを着てるとね、車椅子に乗るときに抱っこしてくれたり、階段をのぼる時におんぶしてくれるにぃくんがすごくおっきいんだなぁ、ってわかるからなんだか嬉しくなっちゃうの。

 それにね、ちょっと使い古しのパジャマはやわらかくって、なんだかあったかい感じがして、とってもきごこちがいいから。

 だからね、わたしが新しいパジャマを買う時は男の人の売り場にいくの。

 たくさんあるパジャマから、にぃくんが着てくれそうで、わたしが好きなのをえらんでね、包みにリボンをかけてもらって……。

 そしてね、次ににぃくんがお見舞いにきてくれた時にね、そっと渡してお願いしちゃうの。

にぃくんのパジャマ、欲しいな……って。

 

 

 にぃくんは、わたしのことを甘えん坊だ、って言っていっつも笑うけどね。ちゃんと理由があるんだから。

 だってね、わたしは眠れない時はいっつもにぃくんのお布団に入れてもらってにぃくんにぎゅ、ってくっついてたから……。

 だから……だからね、にぃくんがいてくれないと眠れなくなっちゃう時があるの。

 

 

 わたしが脚をケガして、病院につれてこられた時もそうだったの。

 わたしどうなっちゃうんだろう、ってものすごく怖かったし、まっしろな病室もすごくさみしい感じがして、落ち着かなくて……。

 何日も寝られなくって、涙が止まらなくって……。

 それで、にぃくんがいっしょに寝てくれたときがあったの。

 にぃくんの胸におでこをくっつけて、にぃくんの手をぎゅって握って……そうしたらすごく安心できて、ほんとうにぐっすり眠れたの。

 そしたらね、にぃくんから離れられなくなっちゃった。

 にぃくんにはちゃんと学校とかがあるのはわかってたんだけど……またあんなふうに過ごさないといけない、って考えたら怖くってさみしくって……にぃくんの手、離せなかったの。

 

 

 その時だったの、にぃくんのパジャマをはじめてもらったのは。

 にぃくんはね、今よりもずっと小さかったわたしの手の指を一本ずつほどいてから、今まで着ていたパジャマをそっとわたしに羽織らせてくれた……。

 すごく、すごくふしぎな気持ちがしたの。

 本当のにぃくんにはもちろん、かなうわけがないんだけど……でもね、あったかくてにぃくんのにおいがほんのちょっぴりするパジャマを着ていたらね……ひとりでも寝られたの。

 

 

 だから、それからずっと、わたしはにぃくんのパジャマでいるの。

 にぃくんもきっと覚えていてくれているの。

 だってね、お願いをしてパジャマを持ってきてくれたときはね、絶対に優しくわたしの肩に新しいお古のパジャマを掛けてくれるの。

 甘えん坊のいずみにあげるよ、って……。

 

 

 わたしが大人になった時はどうなるんだろう、って思うことはあるけど……。

 そんなの、まだまだ先だよね?

 まだ、にぃくんに包まれて眠ってて……いいよね?


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