3.おほしさまをみよう
「ええっ!? ほんとう?」
今日はね、ひさしぶりにおおきな声を出しちゃった。
だってね、にぃくんがこう言ったの……。
「今日は、泊まってあげるよ」
それもね、いつもだったら帰っちゃう時間になってわたしがバス時間だいじょうぶ? って聞くまで黙ってるんだよ……にぃくん。
びっくりしてすごい声になっちゃった……すっごく、恥ずかしかったよぉ。
うん、そうなの……にぃくんはときどきわたしにそんな悪戯をするの。
この前だってわたしがお昼寝しているときにいきなり来ちゃってずーっとベッドの横にいるんだもの……心臓がとまっちゃうかと思った。
…………。
で、でもね……。
……かわりにおはよう、の……キスしてもらったから許してあげたけど。
その……ほっぺに、ね……。
え、えと……それでね。
今回のバツは夜の屋上に連れてってもらうことにしたの。
今日はすごくいいお天気だったから、ぜったいに綺麗な星空が見られるはずだもん。
屋上にいく方法はね、実はすごくたいへん。
にぃくんに手伝ってもらって車椅子に乗って、エレベーターで最上階までいくでしょ、それからにぃくんにおんぶしてもらって……。
おっきな背中にぎゅってしがみついて、にぃくんのお耳のあたりにほっぺをくっつけちゃうとね……えへへー。
いつも車椅子から見るのよりも、わたしのほんとうの身長よりも、もっとずっと高いにぃくんの視界。
「にぃくん、またおっきくなったね」
って言ったら、いっつもにぃくんはこんなふうに言い返すの。
「いずみは、まだまだ小さいんだな」
うん……別に、それでいいの……。
わたしがあんまり大きくなっちゃったら……にぃくん、おんぶとかしてくれなくなっちゃうかもしれないもの。
そう、でしょ……?
そんな事を考えてるとね、にぃくんにもっとくっつきたくなっちゃって……ときどき、にぃくんに怒られちゃうの。
「こら、いずみ、苦しいっ」
って……。
もちろん、笑いながら……ぜんぜん怖くなんかないにぃくんの怒り方……。
「うわぁ……」
屋上はね、ほんとうに綺麗な星空だったよ……。
「ここで、いいか?」
「うん……」
ベンチの上に降ろしてもらって……にぃくんが隣に座ってくれるとね。
わたしはすぐににぃくんの腕に抱きついちゃうの。
「ねぇ、にぃくん……」
「うん……?」
そしてね、順番は逆になっちゃうけど……こう、聞くの。
「手、組んでいい……?」
もちろん、にぃくんには笑われちゃう……。
でもね、ガマンなんてできないの。
そして、これはね……。
まだ、もう少しだけ時間はかかっちゃうけど……にぃくんと一緒に歩くときの予行練習。
うん、そうだよ……にぃくん。
わたしにはね、立てるようになったらにぃくんにしたいこと、にぃくんとしたいことが……たくさん、ほんとうにたくさんあるの。
だからね、お星様にお願いするの。
はやく脚が元通りになることと……にぃくんがいいよ、って言ってくれること。