5.ちょっとだけ怖いから
今日は、三ヶ月に一回の、ほかの病院からもえらい先生が来て診察をする日。
いつもはよく知ってる先生もよそいきの顔になっちゃってね……あんまり、その日は好きじゃないの。
すごく緊張しちゃうし、むずかしいお話も聞かないといけないし……それにね、わたしの脚がどうなっているのかがはっきりわかっちゃうの。
わたしだって、ちゃんとリハビリをがんばってるよ?
でも、でもね……やっぱりすこし怖いの。
不安に、なっちゃうの……。
だからね……にぃくんに、ね……。
お膝の上に乗せてもらっちゃった。
すごく、すごく久しぶりだったの……にぃくんにこうしてもらうの。
むかしはね、わたしはいっつもにぃくんにそうやってだっこしてもらってたの……。
テレビを見るときとか、デザートを食べるときとか。
トランプをするときは……そんなことしたらゲームにならないね、えへへ……。
うん、そう……にぃくんのお膝の上はね、わたしだけの、とくべつな指定席なの。
だってね、にぃくんに頭とか背中とか、ぜんぶよりかかっちゃうとね……。
とってもあったかくて、耳をすますと心臓の音もほんの少し聞こえちゃって……とけちゃいそうになるの。
わたしも、ちゃんと体温があって、心臓もうごいてるけど……それを全部にぃくんにしてもらってる気持ち。
もう、何もかもにぃくんにお任せしちゃって……わたしは安心しちゃっていいんだ、ってそんな気持ち。
にぃくんがいてくれたら、それでへいき……。
だから、看護婦さんが呼びにきてくれた時にはね……。
もう、ぜんぜん大丈夫だったの。
いずみちゃんは甘えんぼさんね、ってからかわれて、少しだけ恥ずかしかったけれど、そんなのも大丈夫。
だって、こころの中はうれしいことでいっぱいで……ぜんぜん気にならないの。
あ、にぃくんがとっても恥ずかしくって、もうこんな風にしてくれなくなったらこまっちゃうなぁ……。
でも、でもね……にぃくんはやさしいから、平気だって信じてるから。
うんと……それでね。
診察の結果は、経過は良好です、って言われたの……えへへ。
待っていてくれたにぃくんにまっさきに言ったらね、やさしくて嬉しそうなお顔で頭をなでてくれたの。
だからね、思わず、ね……。
「ありがと、にぃくん……」
目の前でゆれてたにぃくんの手をぎゅっと引っ張って、ほっぺにくっつけちゃった。
頑張ったのはいずみだろ? ってにぃくんは笑ったけどね……でも、にぃくんも知ってるでしょ?
にぃくんの……おかげなんだよ? ぜんぶ、ぜーんぶ。
えっと、そして……。
お祝いと、ご褒美で……にぃくんに病院のレストランでデザートをごちそうになっちゃった。
フルーツいっぱいのパフェ……生クリームと、チョコレートソースもたっぷり♪
……もちろん、にぃくんに食べさせてもらっちゃうんだけど、むかいあわせじゃ届かないでしょ? だから、にぃくんが途中からお隣に来てくれて……えへへー……。
お昼にはまだまだ早いじかんだったから、貸しきり、だったもんね。
ちゃんとわたしだけじゃなくってにぃくんにも食べてもらったんだよ……。
アイスとか、とけちゃう部分を食べちゃってからね、にぃくんの手からスプーンを取っちゃってガラスの器からフルーツをすくって……にぃくんのお口のところまでもっていくの。
にがてなパイナップルはぜーんぶにぃくんのお口へいっちゃったの、にぃくん、気付いてたかなぁ? ……えへへ。
にぃくん、ごちそうさまでしたぁ。
あ、でもでも……。
「あとで、ちゃんと歯は磨こうね?」
……は、ちょっとひどいよぉ……。
ちゃんと、ゴハンのあとにみがいてるもん……。
…………まだ、イチゴ味の歯磨き粉を使ってるのは…………ちょっとはずかしいけど。
えっと……えと……い、今のはナイショ。
だ、だからね……。
今日は、にぃくんがいてくれたからとってもいい日だったの、ホントに。
にぃくん、また、パフェ食べさせてくれたり、やさしくだっこして……ね?